【旬季】秋月下の歌声

今年も秋分を過ぎると、風がすっと肌に刺さるようになった。仕事帰りに自転車を走らせていると、路地裏の金木犀の香りが突然鼻をくすぐり、思わず足を止めた。空を見上げると、十五夜の月がまん丸く浮かんでいて、銀色の光が通りのアスファルトに柔らかく降り注いでいる。

小学校の頃の秋の記憶は、いつもこの月明かりと共に蘇ってくる。祖母の家の縁側に座り、母が作った月見団子を食べながら、隣のお婆さんがよく童歌を歌ってくれたことをはっきり覚えている。「うさぎうさぎ、何見て跳ねる?十五夜のお月様見て跳ねる?」——少しかすれた声が秋の虫の音と混ざり合い、夜風に乗ってどこまでも漂っていた。当時は歌の意味も分からずただ口ずさんでいたけれど、今になってようやくあの歌声が持つ温もりが分かるような気がする。

先日、地域の秋祭りに参加した。公園の広場にはたくさんの提灯が吊るされ、子供たちがお面をつけて走り回っている。ふとステージの方を眺めると、白髪の老人たちが三味線を弾きながら民謡を歌い始めた。ゆっくりとした節回しが月明かりの下にふわりと広がり、いつの間にか周りの人たちも自然に口ずさみ始めていた。私も知らないうちに唇が動いていて、自分でも驚いた。何十年も前に聞いたあの歌が、体のどこかにずっと残っていたのだろうか。

祭りが終わって家に帰る道すがら、まだ月は高く空に昇っていた。足元に落ちた自分の影を見ながら、ふとあの童歌を小声で歌ってみた。風が頬をかすめて通り過ぎ、どこからか金木犀の香りが再び漂ってきた。秋の月は、何百年も前から同じようにこの空に浮かび、これまでどれだけ多くの人の歌声を聞いてきたのだろう。きっとどの歌声にも、それぞれの秋の記憶が刻まれていて、月がそっとそのすべてを抱きしめてくれているのだと私は思う。

今晩も窓の外には柔らかい月光があふれている。どこかの家から漏れてくる子供の歌声が、静かな夜にゆっくりと溶けていく。秋は短い季節だけれど、この月明かりと歌声があれば、きっと来る冬の寒さも少しだけ和らぐような気がする。

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