【旬季】晚秋のコーヒー

秋の深まり、午後三時過ぎの陽差しが西の空へと傾き始めた頃、いつもの喫茶店「みどり」の窓辺の定位置に腰を下ろした。外は紅葉の色褪せた枝々が冷たい北風に細かく揺れ、枯葉が舞い上がっては舗道に積もっている。店内にはコーヒーの香りが琥珀色の電灯の光と混ざり合い、壁に掛かった古い時計の秒針音が静かに刻まれている。急に冷え込んだ朝が一週間続いたせいか、隣の席の白髪のお爺さんはスチームを立てるブレンドを小さなスプーンで優しくかき混ぜながら、時折外の景色を眺めている。

私はいつものようにエスプレッソを注文する。黒いコーヒーが白い磁器に落ちる音は、秋の夕暮れに特有の静けさの中で意外と鮮明だ。先日整理した思い出の写真がまだ机の隅にある。大学時代の秋祭りで、同級生たちと並んで買った缶コーヒーの冷たさが、今でも手のひらに残っているようだ。あの頃はこんなにゆっくり時間を過ごすことなど考えもしなかった。

「紅茶はいかがですか?今日のダージリンがおいしいですよ」

バリスタの笑顔が記憶の隙間を埋める。去年のこの頃、祖母が入院していた。病院の待合室で淹れたインスタントコーヒーの渋みが、廊下に鳴り響く足音と一緒に心に染み込んでいった。でも祖母は退院した日、「久しぶりやね、おいしいコーヒーを飲もうねん」と言って、私の手を握っていた。あの約束を果たすために、今日もこの店に来ているのだろうか。

コーヒーカップの縁に指をなぞる。表面には冷たい水滴が玉状についていて、指の腹でなぞるとその冷気が指先から腕の中まで染み込んでいく。水滴は指の動きに合わせてゆっくりと流れ落ち、掌に残った湿り気が外の冷たい風にさらされて、まるで秋のしずくが心まで届いたようだ。外では木の葉が舞い落ち始めた。秋は終わりを運ぶ季節だが、それでも何かが始まる予感を与えてくれる。例えば、新しい本を開く時のページの香り、あるいは懐かしい場所で出会う新しい人々。隣の席では若いカップルが笑い合っている。彼らの会話ははっきり聞こえないが、その温かみが空気の中に広がっている。

夕暮れ時の店内はますます静かになる。コーヒーの最後の一滴を飲む。喉の奥に残る香りが、過去と未来をつないでいるようだ。帰る前にパッケージのコーヒー豆を買おう。明日の朝、祖母と一緒に淹れようと思う。秋の風が窓から入ってきて、紅葉の色がコーヒーカップに映り込む。きっと、今日もまた、小さな幸せが積み重なっていく。

外に出ると、冷たい空気が頬を刺す。でも胸の中は温かい。コーヒーの香りが手袋の隙間から漏れて、足元の落葉を踏む音とリズムを合わせている。秋は静かに物語を進めていく。そして私たちは、その中で少しずつ、前に進んでいくのだ。

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